パトロンが欲しい

僕は個人でエロゲーを作っている。
これまで何作か発表してシェアウェアでそこそこ売れたものもあるが、これで生活できるほどではない。
仕事の合間合間に作っているので、どうしても量産もできなければ、品質アップもできないのだ。
ただ、僕はチームプレイは苦手なので、ゲーム会社に就職する気はない。あくまでも個人で作っていきたいのだ。
パトロンが欲しいなあ、と思う。こんな僕にエロゲー制作1本に集中できる援助をしてくれる人だ。
そんな時、僕のゲームのファンだと言う女性からメールをもらった。
「あなたの作るゲームはエロさと優しさが溢れていて、私は女ですがたっぷりと堪能させてもらっています。新作を心待ちにしています」
ただ、残念ながら新作の目途は立っていない。構想はあるのだが、とにかく余裕がないのだ。
パトロンがいればいいのですけどね、と返事を出すと、こんな内容が返ってきた。
「パトロンが欲しいと言う事ですが、私がカンパします。お役立てください」
冗談のつもりだったが、彼女から振り込まれた額を見て驚いた。一か月は余裕で過ごせる額だ。
愛人募集掲示板で資金援助してくれる優しいパパを募集する事に
夢じゃなかろうか?と思った。もちろん、お金もありがたいのだが、それくらい僕の作品に入れ込んでくれている彼女の気持ちがうれしかった。
彼女のために新作にかかろうと思った。上手くいけば、その売り上げで次回の制作資金に回せるかもしれない。
そして、僕は思い切って仕事を止めて、背水の陣を引いた。パトロンになってくれた彼女のためにも、ゲームがダメなら仕事と言う逃げ道は作りたくなかったからだ。
こうして、僕は一か月かけて渾身のエロゲーをリリースした。
しかし、世の中はそう甘くはなかった。全然売れなかったのだ。
ただ、何となく自分でも売れない理由はわかっていた。面白くないからだ。仕事の合間に集中して作り続けていたからよかったのであって、これが仕事となるとどうにもぼんやりとした仕上がりになってしまう。仕事と言うクッションがないだけに、昨日の僕と今日の僕は何の変化もないため、平坦な出来になってしまったのだ。
目先のお金に目がくらんだ自分を悔いて、彼女にお詫びのメールを書いて復職を考えていたところ、こんな返事が来た。
「私は待ちに待ってたぶん、楽しめました。また振り込みましたので、次回も頑張ってください」
見ると、また多額のお金が振り込まれていた。パトロンが欲しいと願った僕の夢を叶えてくれた彼女だが、彼女のお金が今の僕に苦痛でしかなかった。
ホ別いちご
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