お金欲しい掲示板

かのんさんはお金欲しい掲示板に書き込んでいた人妻だった。
「いつ離婚してもいいようにお金は溜めておかねえと」
本気なのかダジャレなのかベッドの中でタバコを燻らせながら笑っていた。
僕はお金欲しい掲示板で結構必死な人を見てきていた。もちろん、アングラな部類に入るし、本気で明日食べる物を買うお金さえないくらい切羽詰まった人間がそんな怪しげなところに金策に訪れるとも思えない。実態は女の子が軽い気持ちでお小遣い稼ぎするような援助交際掲示板だ。
だが、女の子たちもバカではないので、掲示板の主旨に則って「明日までに入金しないと携帯が止められてしまう」とか「仕事の契約が打ち切られて今月の家賃がピンチです」とか悲惨な状況でお金が欲しいことをアピールしてくる。同情を買ったもの勝ちの世界であり、お金のためならそれくらいの芝居は平気で打つものだ。
だが、かのんさんはあっさりとしていた。「お金欲しいんですけど、一晩〇〇円でどうですか?」とごくシンプルな誘い文句だった。本当かウソかわからない必死な状況の書き込みが並ぶ中、かのんさんのそれはあまりにも浮いていた。
お金ください掲示板
「離婚考えてるの?」と聞くと「予定は未定だけどね」とこれまたあっさり返された。でも、僕はこれくらいあっさりの方がいい。正直な話、やらせてくれさえしたら女の子の事情なんてどうでもいいのだ。それをくどくどと「こう言う事情でお金が欲しくて」と同情を買うように訴えられて、切々と「こんなに困ってるんだからもう1枚くらい援助して?」とねだられたりするとげんなりするものだ。
「いつの間にか結婚して、いつの間にか離婚している感じがいいなあ」
と、かのんさんは言っていた。そんな空気のような関係でお互いの利害を一致させることができる人っぽかった。だからこそ、お金が欲しいかのんさんと女の子とやりたい僕のふんわりとした関係も上手くいくのだろう。
淡々と僕の欠点をちくちく指摘して離婚届に判を押させて財産をすべて持っていこうとしている奥さんとはとっとと関係を清算して、かのんさんのような女性と来世は一緒になりたいものだ。
お金ください掲示板
お金恵んでくれる人